アダルトチルドレン(AC)とは?
1.アダルトチルドレンとは?

もともとこの言葉は、「親がアルコール依存症の家庭で育った人」という意味で使われ出したものです。その後、ほかの依存症問題にも似たような問題があることが見いだされ、それ以外のケースにも使われ出しました。

現在アダルトチルドレンとは、親やその養育者との関係において虐待やネグレクト、また家族間が不仲でありそのような環境で育った場合、例えば自分の感情との折り合いがつけにくい、対人関係で適切な距離感をとりにくい等の「生きづらさを抱えて生きる人」のことをいいます。この言葉は医学用語ではなく心理的な用語として使われております。

2.アダルトチルドレンとなる原因は?

原因やその源はいくつかありますがほとんどが親との関係、養育環境にあると言われております。

  • 虐待

身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)等が代表例です。

(2)親が「毒親(どくおや)」

   厳密な定義はありませんが最近言われるようになりました。「毒になる親」の略称で

  す。

(3)機能不全家族

   機能不全家族とは、「家族」としての機能が働いておらず、日常的に家族内がストレスに満ちている家族です。

(4)アルコール依存症の親

   アルコール依存症になると周囲の人間への関心とか配慮が薄れます。

   アルコールを飲むこと、入手することに注意が向いてしまうからです。

   そしてアルコールを入手するためには何でもしようとします。

   自分の子供にアルコールを買ってくるように命令したり、アルコールがなくなると

   暴力をふるうことも度々あったりします。

   家庭の中でこういった状況にあると、子供のこころはその対応にまいってしまい、健全な成長は難しくなってきます。

 (5)(本人の)体質的なもの  

   何かあるとすぐ泣く赤ちゃん、いつも静かで手のかからない赤ちゃんがいるように子供は生まれたときからいろいろな特徴をもっています。

   

   実際に子供が自閉的だったり注意や集中力に欠けていたり、理解力が低かったり、衝動的や過敏的だったりすると、親は非常にストレスを抱えやすくなります。

   そして何とかしようと支配的になったり、叱ることが増えたり、時には手をだしてしまうこともあります。そうなると家族は疲れ切ってしまい、殺伐とした雰囲気の家庭環境は更なる悪影響を及ぼしてしまいます。

   子供の体質であると言うことを理解できないと、親は虐待などの不適切な養育を続け、結果アダルトチルドレンを生み出してしまうことになります。

   これらの原因は「落ち着きのない子供にある」などと単純に考えてしまってはいけません。

   実はアダルトチルドレンの原因はほとんどの場合、「親にある」と言っても過言ではないからです。

   虐待などが子供の心身の成長に影を落とし、成人したときに社会に適応できなかったり、人間関係をうまく築けなかったりしてしまうのです。

アダルトチルドレンのタイプや状態、特徴

アダルトチルドレンは通常6つに分類されています

  • ヒーロー(英雄)

親の期待に応えるため勉強、スポーツでよい成績や評価をもらうことに力を注ぎすぎてしまう。

周囲からはしっかり者や頑張り屋さんであると評価されることが多いですが、その行動は自分のためではなく、ネガティブな意味合いがあります。

それはひとえに家庭内の雰囲気を悪くしないようにという、子供なりの防衛的な行動なのです。

しかしこのタイプは、勉強やスポーツで成果があるうちは「よいですが、それが失敗したり挫折したりするととたんに心が折れて破綻してしまいます。

  • スケープゴート(生け贄)

ヒーローと全く反対の行動をとります。

問題行動をとったり、過剰に低い成績を取ったりすることで家族の中で悪者や

問題児となり、憎しみや怒り、不満、鬱憤を一人で引き受けようとします。

そうすることで家族のバランスをとろうとするのです。

  • ロストワン(いない子)

無い子供、生まれてこなかった子供として家族との関係を絶つような行動をとります。

家族の中での存在を消し、気配を感じさせずに生きていこうとするので、迷子となっても家族の誰からも気づかれることがありません。

家族旅行に行くことになっても連れて行ってもらえず、家の中にいてもいないものとして扱われ、いつも一人で孤独に過ごしてしまいます。

  • ケアテイカー(世話役)

小さいうちから家事をしたり、家族の面倒をみたりと、献身的に家族の世話をし家庭を支えます。

親がいてもしないので代わりに行うことが多く、自己犠牲と思われることもありますが、子供の場合は自虐的な行為でもあります。

家族が崩壊しないように、全てを一心に背負ってバランスがとれるように努力します。

  • ピエロ(道化師)

家族の暗い雰囲気を回避するため、おどけたり冗談を言ったり、ふざけたりをして笑わせ、家族を明るくしようとします。

面白くて明るい性格に見えますが、実はとても敏感に「周囲の雰囲気を読み取り、人の表情を伺い、険悪なムードにならないように細心の注意を払っています。そのため常にびくびくしています。

  • イネイブラー(支え役)

偽親とも呼ばれ、親の不在や育児放棄(ネグレクト)があるときに、親の代わりに家事や育児を行う。

家族メンバーにつくしたり、他者に世話を焼いて親のような役割を果たしたりすることで自分の問題に向き合うことを回避する。

こうしたアダルトチルドレンには共通して自尊感情の低さが見られます。非現実的な優越感を持っていたり、人を見下す人もいて、これらは往々にして自己評価が低く、他人に本当の自分を知られてしまうことを恐れているのです。

他人からの評価を過剰に意識するため、尊大な態度をとり、自分に従う者だけを周囲に集めようとするのです。

アダルトチルドレンの状態がみられたらどうする?

回復させる方法は?

アダルトチルドレンは先にも述べたとおり自己認識の概念なので、医療的な治療の対象ではありませんが、生きづらさを抱えて悩んでいる人たちの精神的負担を軽減する方法があります。

ここからはアダルトチルドレンの悩みから回復するための4つのステップを紹介しします。

  • グリーフワーク(過去を探る)

グリーフとは、大切な人を失った時に起こる深い悲しみや悲嘆をさす言葉です。

グリーフワークでは、家族に言えなかったことを口に出す。親に宛てて手紙を書く(出さないつもりが重要)などで、失われたもの、持てなかったものに対しての嘆きを表現し、喪失をうけいれます。

  • ナラティブセラピー

(過去と現在をつなげる)

自らの生育を物語として語り、治療者(医者、セラピストなど)からの助言を得て自分史の再構成を行う精神療法です。

自分史の再構成を行うことで、過去や自分自身を見つめ直すコトができるようになり、別の角度から自分を見ることで自分本来の個性や力を取り戻していくことができます。

  • 認知行動療法

(自分の中に取り込んだ信念に挑む)

物事の受け止め方や考え方を再検討することで、感情や行動を変えていく精神療法です。

アダルトチルドレンは物事の受け止め方や考え方に癖がついている場合が多く、自分の中に受け止めた物事を改めて検討することで考えの癖を修正します。

浮かんでくる考えと現実の違いを意識することで、気持ちに変化を起こしていくことが「出来ます。

  • ァサーティブコミュニケーション(新しいスキル(生きる上での技能)を

学ぶ

相手の権利や要求も尊重することより、自分の意見や要求を受け取ってもらえるようにするコミュニケーションの方法です。

アダルトチルドレンは、言いたいことが言えず相手の要求をのみ続けたり、相手の意見を否定しすぎたりすることが多いですが、この方法を学ぶと、ほどよく自己主張できお互いを尊重し合い、一方通行だったコミュニケーションが上手にとれるようになります。

まとめ

アダルトチルドレンとは、子供時代に親との関係で何らかの「トラウマ(心的外傷)を負ったと考えている成人のことで、決して大人になりきれていない大人ではありません。

家庭環境の特徴としては、身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、育児放棄といったネグレクトや、親がアルコール、ギャンブルなどの依存症であることなどが挙げられます。

アダルトチルドレンには、ヒーローやスケープゴートなどの様々なタイプがありますが、ほとんどの子供が家族のバランスをとろうとすることからおこります。

回復させるにはいろいろな精神療法があります。